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デンマークでポスドク、大学発ベンチャーで研究員をした後、ひょんなことから大学の助教となった一博士号取得者が日々感じたこと、たまにサイエンス(主に化学)についてつづります。


by Y-Iijima_PhD
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共通語としての英語

mixiニュースにものってたけど

English will turn into Panglish in 100 years

English as it is spoken today will have disappeared in 100 years and could be replaced by a global language called Panglish, researchers claim.


だそうです。おそらくこれは英語が昔のラテン語のような存在になるということを意味しているのではないでしょうか。昔のヨーロッパでは主に学者同士の共通言語としてラテン語が使われていましたが、それはすでに一般的には使われなくなった言葉、新たな言葉や表現が生み出されることもなく言語としては死んでいるといえます。しかし、ノンネイティブ同士が自分の母国語でない共通言語を使ってコミュニケーションを図る際にはこういう死んだ言葉の方が便利かもしれません。生きている言葉は時代によってその意味が変化してきます。最近の日本語の「何気なく」が「何気に」になったり、ヤバイが素晴らしいという意味でとられるようになったり、役不足が謙遜の意味でとられるようになってきたりという風に意味が逆転することも珍しくありません。これはその言語が生きていることの証ではありますが、ノンネイティブ同士の共通言語としてこのように意味の変化の激しい言語は適しているとはいえません。共通言語としては化学者にとっての化学式、数学者、物理学者にとっての数式、分子生物学者にとってのDNA塩基配列やアミノ酸配列のように一義的に意味が決まっていて誤解を生まないものであることが望ましいと考えられます。このような理念で生まれたのがエスペラント語などの人工言語ですが、何が世界標準となるかはその言葉を話す人口による数の論理とその言語を母国語とする国の国力によるので人工言語が世界標準になることはおそらくないと思われます。

もちろん英語は生きた言語ですから新しい語、表現が日々生まれています。しかし、英語を共通言語として使うノンネイティブにとっては新しい流行の表現、しゃれた表現は必ずしも必要ではありません。例えば日本の英語番組とかネットでこれがアメリカで流行っているクールな表現だといって、それを覚えてもノンネイティブの人にはおそらく通じないでしょう。海外で暮らしている日本人に日本で流行っているものや流行語を話してもわからないのと似たようなものかもしれません。デンマークでは英語はほとんど問題なく通じますが、デンマーク人が常に新しい英語の表現を仕入れているとは考えにくいです。おそらく大抵は学校でしっかり話せるようになるまで訓練を受け、基本的にそこまでで得た表現、単語力でずっとやっていくんだと思います。だから英語が世界共通語となっていくとアメリカ、イギリス、オーストラリアで英語も少し違うように多少の地域差はあると思いますが、変化のない死んだ言語となっていくのではないかと思います。

非英語圏で英語を使う際にはさらに気をつけないといけないことがあります。英語がほとんど話せないうちは単語だけで答えたりしかできないので、思うことが伝えられなくてもどかしいものの仕方ないし、それでも何とかなります。でもある程度長い文を作って話すようになるとブロークンな英語ではなかなか通じません。ネイティブだったら意図を汲んでくれるでしょうが、ノンネイティブは完璧な英語しか知らないので少し崩れると誤解を招いたり、全く理解されなかったりということが間々あります。共通語として英語を使う場合は誰でもわかる平易な表現で、文法的に大きな間違いなく話すことが重要となります。自分もまだまだ全然このレベルには達していないですけど。だからノンネイティブにHa?とかSorry?とかI don't understand. といわれてもそれはただ単にうまく伝わらなかっただけで、けっしてこっちの言っていることに興味がないとかそういうことじゃないんだと思っています。以上が非英語圏で英語を主なコミュニケーション手段として1年間暮らしてきた人間の思うことです。

しかし、英語は難しいですね。その理由の一つに正書法がしっかりしていないということもあると思います。もう慣れてきたとはいえスペルと発音が一致しない点が新しい単語を覚える際、文章を読む際にストレスになります。デンマーク語も負けてないですけどね。デンマーク語の場合スペルより実際の発音が大分簡単になっていることが多いです。例えばI'm going to Tokyo. に相当する表現はJeg skal til Tokyo. ですが、発音を無理やりカタカナで表すとヤ スカ テ トーキョーになります。Good morningもGod morgenでゴモーンだし。文法も英語よりさらに簡略化された感じで楽な部分もあるけど、発音、聞き取りの難しさがそれを補って余りある気がします。そして日本語も正書法がしっかりしていない言語の一つですね。どうしてこうもとっつきにくい言葉ばかり学んでいるんだろうと思いますが、そこが言葉を学ぶ面白さでもあります。
by Y-Iijima_PhD | 2008-04-01 07:49 | 世界のニュース