デンマークでポスドク、大学発ベンチャーで研究員をした後、ひょんなことから大学の助教となった一博士号取得者が日々感じたこと、たまにサイエンス(主に化学)についてつづります。


by Y-Iijima_PhD
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NanoKids

ご要望があったので久しぶりに化学ネタ。ちょっと古いですがJ. Org. Chem. 2003, 68, 8750-8766より。

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この当時、一世を風靡した化学界の風雲児というわけではないですが、この絵をグラフィカルアブストラクトで見た誰もが何だこりゃと思ったに違いない、まさにネタとしての化学。見てのとおり人の形をした分子を作っています。さらにこの分子は着せ替えが可能。適当なジオールと混ぜて電子レンジでチンすると違うキャラに変身!

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個人的にはNanoTexanがお気に入りです。さらに手をつないでダンスをしたりすることもできます。

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こんなに多彩なNanoKid、当然のことながら実用的には何の役にも立ちません。そもそもこの分子はアメリカのテキサス州にあるライス大学で学部生の教育プログラムの一環として作られたもののようです(だからNanoTexan)。専用のホームページもあり、ムービーはちょっと重いですが学部生には内容も英語のレベルもちょうどいいかなと思います。まあ、こういうのもありですな。周りでも批判的な意見は特に聞かなかったし。論文も結構な権威のあるジャーナルに載っているのでレビューアーもシャレがわかる人だなと思います。

しかし、こういう見た目に面白い分子というのは今までもいくつか合成されてきました。例えば立方体の形をしたキュバンとか正12面体のドデカヘドランとか。自分が最初に作った化合物も似たようなものですね(ちなみにこの化合物もドデカヘドランの合成者によって最初に作られました)。

化学というと新薬とか新素材とか機能性を重視することがほとんどですが、芸術性も同じぐらい重要です。それは分子の形だけでなく、合成ルートがいかに無駄なく洗練されているか、トータルの収率が高いかということも含まれます。さらに反応で無駄なゴミが出ない、使う試薬の毒性が低い、安いということまで盛り込めれば言うこと無しだと思います。

一流の合成化学者は確かな実験技術と反応に関する豊富な知識を持っていることは当然として、さらに芸術的な感性も持っている必要があるわけです。ということで合成化学者はミクロどころかナノの世界で小さな小さな彫刻を作り上げるまさに芸術家なのです。自分も高みを目指して精進していきます。
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by Y-Iijima_PhD | 2008-04-04 06:02 | 化学