デンマークでポスドク、大学発ベンチャーで研究員をした後、ひょんなことから大学の助教となった一博士号取得者が日々感じたこと、たまにサイエンス(主に化学)についてつづります。


by Y-Iijima_PhD
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カテゴリ:化学( 24 )

Love Chemistry

業界で話題の3月4日に発売された小説「ラブ・ケミストリー」、早速読み終わりました。感想はなかなか面白かった。なんとなく「私」はこの人かなと思っていたのが見事に裏切られ、最後はサプライズと著者が書いてあるとおり予想外の結末でした。

内容も純粋に面白いと言えるものだと思うけど、やはり有機化学の全合成の研究室を舞台にした設定が小説としては新鮮で、自分にとってはまさに日常でこんなことあるあると思う内容が随所に散りばめられていました。化学を知らない一般の人はあまりイメージできない描写もあるように思いますが、合成系の研究室のキタイナイ実験室の様子、深夜まで連日実験に没頭する日常、そしてバリバリの体育会系の雰囲気が漂ってきます。自分も学生の時はそうだったなあと思うことがいろいろあります。今は立場も違うし、プライベートもしっかりある生活をしていますが。まあ周りを見ている感じでは同じだなと思うことは多々あります。

ストーリー的にはどこかで見たり、読んだことがあるようなもので斬新さはありませんが、やはり有機化学との組み合わせというアイディアは新しいものです。普段あまり小説は読みませんが、ホリエモンの「拝金」や「成金」のように現実とリンクしながらスピーディーな展開でサラッと読める娯楽作品だと思います。有機化学者なら楽しめる事請け合いです。もっと一般の人にも状況を思い浮かべられるようにするには挿絵を入れるか、用語の解説を新明解国語辞典のような語り口で載せておくといいのではないかと個人的には思いました。
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by Y-Iijima_PhD | 2011-03-06 00:05 | 化学

Pacifichem

12月15日から21日までハワイにて開催されたPacifichemに参加してきました。これは5年に一度開催される学会で太平洋に面する国々の化学会が主催するかなり規模の大きな学会です。発表登録者数は13000件以上と毎年年度末にある日本化学会の年会を上回るほどの規模です。講演者はほとんどが大学スタッフで有名どころもかなり来ているので中身も全然違います。とはいっても発表者の内訳を見ると実に半数が日本人(6ページ目)ということで実質日本の学会なんじゃないかと思えなくも無いわけです。やっぱり日本人はハワイに行きたいのかなと思わせます。かくいう自分もいろいろな国を周っていますが、実はアメリカは初めて。いや実際にはイギリスに行くときに飛行機が欠航になって代替便としてアメリカ経由で行ったことはありますが、空港から出ていないので実質初めてです。

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主な会場はハワイコンベンションセンターとヒルトンとシェラトンの3つです。自分の興味ある分野は基本的にヒルトンかコンベンションセンターで、ホテルからはどちらも歩いて10分ほどのところでした。それにしてもヒルトンはすごかった。何しろ何でもそろっている。レストランはもちろんスタバからコンビにまでうわさでは病院もあるとか。何でも敷地内で完結してしまいます。まあ正直ワイキキは全て人工的に作られた区画のようで高層のホテルが林立し、どこ行っても同じような店で日本人だらけなのでここにいるだけで十分なんじゃないかと思いました。プールもビーチもあるし。

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で、肝心の学会ですが、会場はほとんどホテルのパーティー会場で椅子が並べられているだけ。机が無いのでメモを取るには不便です。それに発表のほとんどは総集編といった感じで細かく議論するような内容でもない場合が多かったように思います。有名人の発表を生で聞けるというのはいいけど、自分の聞いた範囲では正直それほど深い議論になる講演は無かったように思います。ちなみに自分の発表は土曜のちょうど夕飯時のポスター発表でしたが、時間が時間ですし、次の日に帰るという人が結構多かったのでみんな飲みに行ってしまったのかほとんど人が来ませんでした。知り合いもほとんどおらずなんとも寂しい発表でした。

それでも発表も終わったし、残りの2日はそれほど聞きたい講演も多くなかったので少しは観光でもと思っていたらまさかの雨。しかも朝から晩まで。時に土砂降りでとても外を歩けるような状況じゃありませんでした。お陰で観光はほぼ皆無。前半はまじめに学会に参加していましたから。少し空き時間でビーチに入ってみたけど水が冷たすぎて泳げる状況ではありませんでした。

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気温は半袖一枚で暑過ぎず、夜も寒いことはなく服装を選ぶのに苦労しないいたって快適なものでした。水に入るのはちょっと寒いけど、スポーツするにはベストな気候です。ただそれ以外のことはというと食事は少し割高で、異常に量が多い割りにおいしくないという残念なものでした。スーパーにいっても新鮮で珍しい果物はほとんどありませんでした。ココヤシの木が沢山植えられているのにココナッツジュースを売っていることもないし、料理にココナッツミルクを使うこともほとんど無いのでただの飾りなのかな。観光していないので景色についてはなんともいえませんがワイキキは人工的であまり面白くなく、歴史的なものも少なく、なんといっても日本人だらけなのでちょっとなと思いました。ちなみにホテルもレストランもショップも空港のイミグレーションでさえも日本語で書かれていたり、日本語を話せる人がいるので英語ができない人でも問題なくすごせてしまうというのはすごいと思いました。その分外国に来ているという感じがあまりしないのは欠点でもあります。六本木のほうが外国人比率が高いのではないかと感じるほどです。

まあ基本仕事できているからですが、完全に休暇で家族と来るなら安心で楽しめる場所なのかもしれません。すくなくとも男だけで来てもあまり楽しめないんじゃないかな。個人的には南の島ならタイのほうが食事もおいしく、年中泳げて、アクティビティーも豊富なので好きです。まあこれも休暇だからでしょうが。基本的には仕事で楽しそうなところに来ても面白くないということです。とりあえず今回の出張でハワイはもういいかなという気になりました。
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by Y-Iijima_PhD | 2010-12-24 23:53 | 化学

ノーベル化学賞

本日発表されたノーベル化学賞で日本人の先生が2人受賞されました。大変喜ばしいことですが、同時にうちの研究室としては残念な気持ちもあります。今回受賞された分野はパラジウム触媒を用いたクロスカップリング反応に関するもので、うちの先々代の教授である辻二郎先生も候補に挙がっていました。研究室だけでなく大学も受賞した場合に備えていろいろと準備していましたが、残念ながら受賞とはなりませんでした。さらにこれだけ近い分野での受賞ということですからおそらくもう候補に挙がることも無いのではないかと考えられます。とにかく日本人の研究者が数多くかかわっている分野で似たような反応に日本人の名前がついているものが数多くあります。確かに今回受賞された3人はもちろん有名で、反応も研究室でもよく使われるものですが、他の人たち、反応も同じぐらい重要であることに変わりはありません。日本のメディアだとノーベル賞をとったら急に祭り上げるし、日本人がとったとき、日本人だけしかまともに報道しませんがノーベル賞をとったからエライのではなく、エライからノーベル賞をとったのであって、他にもエライ人は沢山いるということです。

毎年ノーベル賞の発表はホームページで見ていますが、最近のネット技術の進歩から今年はライブストリーミングが見られるようになっていたのでずっと見ていました。1人目のHeck先生の名前が出てきたとき、今年の受賞はパラジウムに関する反応だということでにわかに期待が高まりましたが、2人目に根岸先生が選ばれたとき、これはちょっと無理かなと思い、3人目の鈴木先生が出てきたときはやっぱりそうかということで辻先生はもう選ばれることはないという落胆が正直研究室には広がりました。先月講演に来ていただいて、夕飯もご一緒させていただいたので。他の研究室でも同じような気持ちになったところは多いのではないでしょうか。それほどとにかく候補となる人は沢山いる分野なのです。まあでも鈴木先生は大本命でこの分野であれば絶対受賞するだろうと思っていました。他に誰が来るかが難しいところで、正直根岸先生はちょっと予想外な感じがしました。

今回の受賞内容について詳しいことは専門のサイトに譲るとして、個人的に分析してみると、反応としては3人の開発した反応はどれも同じタイプのものです。全てパラジウムを触媒として塩素、臭素、ヨウ素といったハロゲン元素のついた炭素と何か金属のついた炭素の結合を作るというものです(図を書くソフトが入っていないのでわかりずらい)。NHKのニュースで柴崎先生が解説していましたが、そういった反応が開発されるまではマイナスの炭素同士をつなげなければいけないので、そんなことはできないと考えられていたのがパラジウムを使うことで可能となりました。それで3人の開発した反応を見てみると片方をハロゲン元素のついたものを使うことは共通で、Heck反応は金属ではなく水素の部分で結合を作るので反応の仕組みは少し違うのですが、原料と結果としてできるものは同じパターンです。根岸カップリングの場合は金属として亜鉛を使い、鈴木カップリングの場合はホウ素を結合相手の金属として使っています。他にもケイ素を使ったり、マグネシウムでもできるし、スズも有名でいろいろなパターンが開発されています。そんな中でなぜこの3人が選ばれたかというと、おそらくこの3つが工業的にもよく使われるものであるからではないかと思います。反応性で選べばスズを使ったものが信頼性が高く、研究室ではよく使われます。しかし、スズ化合物は毒性があるのであまり工業スケールでは使いたくないものです。それに比べてHeck反応は触媒としてのパラジウム以外に毒性のある重金属は使わないですし、根岸カップリングの亜鉛も毒性は無く、安価。鈴木カップリングは毒性が低く安全、安価というメリットが大きい反応です。つまるところいかに安く安全で確実なプロセスとして工業利用ができるかというところで評価されたのではないかと思います。そういう点で見ると発表された順番は開発された順番だけでなく、原料の値段の順番にもなっていそうです。

ということでしばらくはノーベル賞フィーバになりそうですが、前回日本人がとったときもそうでしたが今回の受賞は30年以上前の成果に対するものです。今回の受賞がそのまま現在の科学技術レベルをあらわすものではないということは肝に銘じなければなりません。パラジウムのクロスカップリングは絶対対象となるはずだと思われていた本命の分野でした。では次に何が来るか?これから20年、30年後に対象となるものが今の日本で生まれているかというと、まあiPSは実用化段階まで行けばあるかもしれないけど、他に思い当たるものがあまりないような気がするし、環境としてもどうかなと日々思っています。
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by Y-Iijima_PhD | 2010-10-06 22:49 | 化学

競争的資金

本日、自分の提案した課題がとある競争的資金で採択されたことが公表されました。内定の案内は先週すでに来ていましたが、今日その団体のホームページに採択課題一覧が表示されました。

7月に申請して、10月から支給となるので科研費に比べるとかなりのスピードです。期間は半年間で額は若手でも取れるもので、単位時間当たりで考えれば結構なものだと思います。去年までは別々の枠で募集していたものを一まとめにした資金なので採択数は859件とかなり多いです。自分の申請した分野でも100件以上が採択されています。テーマは自分が今のポジションを得てから1年間自分一人で細々とやってきたものです。去年も応募したけど、去年はもっと額が大きくて採択数が少なく、特許がある、もしくは取れそうなものが優先されたので始めて1,2ヶ月のテーマが通るはずもありませんでした。しかし、今年は確率が上がったということもあるけど、1年間やって多少ポジティブな結果が得られたので、それをもとに提案することで信頼性があがったというのもあったと思います。

でも資金を援助してもらうことになったからにはそれなりの結果を出さねばなりません。まあかなりギャンブリングな分野なのでいいものができるかどうかはやってみなければわかりませんが。しかし、すでにちょっとだけ活性があるのが得られているのでとりあえず0から1を作る一段階目はクリアしているかな。これも全く何の確証も無く、このタイプの化合物が狙っている活性があるという報告も一切無い中、試しに作ってみたら面白そうな結果が出たという幸運に恵まれたものでした。これを何とかもっといいものにこの半年で育てていかなければなりません。学生実験を教えたり、学会があったり、卒論指導があったりで前期より忙しい後期ですがやっていきましょう。相変わらず一人でですが。
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by Y-Iijima_PhD | 2010-08-31 00:34 | 化学

医薬品クライシス



先週土曜に発売された本書、読み終わりました。薬が開発されるまでの過程がわかりやすく書かれていて、それが社会の状況の変化によってどのような影響を受けてきたか、今後どのような状況になっていきそうかが書かれています。帯にも書いてあるけどこれから新薬を開発することはますます難しくなりそうだというのが再認識できました。自分のやっている研究も創薬研究という大きな流れの一部を担っていると思っているので、できればいいものができたらとは思っているのですがそうそうできるものではありません。

まあ自分のスタンスとしては合成化学者であることからも何にかいい活性の化合物を作り出して、それを製薬会社に導出できればいいなというもので、最後まで完結させようというのは実際に無理だし、あまり考えていません。今は大学にいるので活性メインで攻めるか、作り方で魅せるかという方向性になりますが。画期的な新薬が生まれる分野としては既存のやり方、分子では対処できない疾患ばかりなので、違ったコンセプトで新たなものを生み出していく必要があると思います。自分もなかなか時間が取れないですが、細々とそのような研究をしているつもりです。先月出した活性試験の結果が返ってこないので次に打つべき手が定まらない状況ですが。

ちなみに著者の方とは以前飲み会でお会いしたことがありますが、それだから紹介したというわけではありません。昔から面白い記事、ブログも書かれている方ですし、本書も面白く、わかりやすく書かれています。製薬業界に興味がある、行きたいと思っている学生は是非読んでみるといいと思います。
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by Y-Iijima_PhD | 2010-01-21 23:49 | 化学
久しぶりの更新です。忙しいのもあるけど、毎日代わり映えのしない日々なので最近書くネタがないのが一番の原因です。そんな中、ネットのニュースでエコナシリーズの食用油を回収するというのが書いてありました。多分すぐ消えるので一部引用。

花王は16日、特定保健用食品「エコナ」シリーズ全商品について、17日に出荷を停止し、販売を自粛すると発表した。対象は、食用油やマヨネーズ、ドレッシングオイルなどシリーズ46商品と、同商品を使ったドッグフード13商品を合わせた計59商品。

 商品に「グリシドール脂肪酸エステル」が多く含まれ、発がん性のある「グリシドール」という物質に分解される可能性があるため。同社では、「安全性に問題はない」としているが、グリシドールに分解されるメカニズムや可能性がよく分かっておらず、欧州を中心にグリシドール脂肪酸エステルの安全性を懸念する声が高まっていることから、販売を見合わせることにした。


生化学、食品化学は専門外ですが一般的な有機化学と生物学でわかる範囲で考えてみます。まずエコナの主成分であるジアシルグリセロールは一般的な脂肪であるトリアシルグリセロールから脂肪酸が一つなくなった形です。細胞内のシグナル伝達にもかかわっているようなので、消化管の粘膜細胞に影響がゼロとはいえないかもしれないですが、これ自身、食品中にもあるようですし、脂肪が消化、吸収される過程でもできるものなので毒性があるとは考えにくいです。最終的に腸から吸収されるときにはグリセリンと、脂肪酸になるはずだからその後は普通の脂肪と変わりません。ジアシルグリセロールがリン酸と結合してリン脂質になると、これは細胞膜の構成要素であったりもするので多少違った影響もあるかもしれないけど、調理から消化、吸収の過程でできるとは考えにくいので特に問題なさそう。

しかし、今回の問題であるグリシドールエステルとなるとちょっと危なそう。グリシドールは反応性の高いエポキシ基を持っているので、いろいろな物質と結合してしまう可能性があります。まあ加熱調理をすれば大抵何かと反応してこのモノが食品中に残っているとは考えにくいですが、どの程度の残っているか、何と反応したかによっては危ないかもしれません。実際にどの程度入っているのかの情報がないし、毒性も知らないのでなんともいえないですが、このものが入っていないことに越したことはないと思います。Wikiには胃酸で分解されてグリシドールが出るから危険じゃないかとかかれていますが、これはむしろグリセリンに戻るほうが起こりうる反応だと思います。どうやってできているのか単純に考えれば、遊離の水酸基が脂肪酸を脱離基として環化するのか、先に脂肪酸が脱離して水酸基が巻き込むかのどちらかでしょう。実際には簡単にはおこらなそうな反応ですが。

実際にどんな条件にされされているのかわからないので正確なことはわからないですが、グリシドールエステルが副生しないプロセスを確立してほしいものです。今回のエントリーは絵を描くのが面倒かつChemDrawが入っていないPCで書いているのでちょっとわかりにくいですかね。
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by Y-Iijima_PhD | 2009-09-17 01:15 | 化学

オゾン発生器

最近のニュースで家庭用オゾン発生器についての注意喚起がありました。知らなかったけど最近ではそんなものもあるんですね。以下読売より引用

国民生活センターは27日、室内の除菌・脱臭効果をうたった家庭用オゾン発生器の中に、人体に影響を及ぼす高濃度のオゾンを排出するものがあると発表した。

中略

全国の消費生活センターには2004年度から5年間で、「気分が悪くなった」などオゾン発生器の安全性に関する相談が計67件寄せられた。

 国民生活センター商品テスト部は「使用方法によっては、身体へ影響を与える。安全対策が施されていない現状では、購入しない方がよい」としている。


オゾンといえば一般にはオゾン層が有害な紫外線を吸収しているとか、浄水に使われているとかいい印象があるのかもしれませんが、化学者からしてみれば強力な酸化力を持った危険な物質という印象のほうが強いです。自分の専門の有機化学ではオゾンは二重結合を酸化的に開裂する反応に使います。

自分も何度かやったことがある反応ですが、やっぱり危険だという印象です。基本的に万が一オゾンが漏れ出しても大丈夫なように反応は排気装置内で行います。反応後の生成物も爆発性があるので注意して分解してから処理を行います。また反応装置にゴム製品は使えません。初めのころゴム栓をしていたら後でボロボロに崩れたし、オゾン混合ガスを反応系に導くチューブがものの数分で分解、断裂されてしまったこともあるので冷や冷やしました。なのでこんな危険なガスを室内にばらまこうという発想はちょっと理解できません。確かにある程度殺菌とかもできるかもしれませんが、人体も含め室内のあらゆる部位が酸化されてしまいかねません。

オゾンはマイナスイオンと違ってその性質がしっかりと調べられている物質なので危険性の情報は十分手に入るはずだと思うのですがこういう問題が起こってくるのですね。個人的にはオゾンは一般家庭で扱うようなものではないし、その必要性もないと思います。
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by Y-Iijima_PhD | 2009-08-29 20:58 | 化学
気になるニュースがあったのでちょっと。リンクはそのうち消えてしまうでしょうから一部引用。

2005年に開発されたパーフェクトペリオは、人体への影響を最小限に抑えつつ、虫歯菌や歯周病菌を溶菌する口腔機能水。白血球と同じ殺菌成分である「次亜塩素酸」と「炭酸水素ナトリウム」が含まれた電解水により、虫歯菌や歯周病菌の周囲にあるバイオフィルム(口腔内微生物によって膜状につくられる構造体)を破壊し、菌を破裂させる仕組みで、現在は約200の歯科医院で販売されている。

従来の虫歯菌や歯周病菌の殺菌に使用していた抗生物質などの薬とは異なり、白血球と同じ殺菌成分であるため、アレルギーや副作用の問題がほとんどなく、子供や高齢者まで安全に安心して利用できるのが特徴だ。


開発元のサイトを見るともっと学術的に書いてあります。まあ殺菌作用があるのは当然ですが、これが白血球によっても作られているということは初めて知りました。より詳しくは白血球の中の好中球が酵素により次亜塩素酸を作っているようです。

しかし、体内でも生成しているから安全安心と言い切るのはどうかと思います。だって家庭用漂白剤の成分だし、プールの塩素消毒に使うのもほぼ同じものですから。まあ濃度が低いというのと、無差別に酸化することで殺菌するし、すぐに分解するから抗菌剤に比べれば安全ということなのでしょう。まあいずれにせよ、生体内で次亜塩素酸が利用されていることは素直に驚きでした。
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by Y-Iijima_PhD | 2009-07-13 23:55 | 化学

学会

水曜から今日まで久しぶりに学会に参加して来ました。といってもそれほど堅苦しいものではなく、学生から大御所まで2泊3日で交流する会という位置づけです。まあ合宿といってもいいです。この会に参加するのは4回目ですが、前回は5年前なので結構久しぶりです。その当時仲良くなった人たちも何人かは大学の助教などとして残っているので、久しぶりに会うのは結構楽しみでした。しかし、例年飲み会はかなり激しいことで有名です。夕飯で飲んだ後もビール片手にゼミ風の軽めの講演、ポスター発表をした後、夜通し飲みながら語り合います。アルコールの消費量は例年はんぱないです。

今回は筑波山の登山口近くのホテルを貸しきっての開催でした。以前、普通に一般客もいるところで開催したときは苦情が来たので当然の配慮です。朝まで飲み続ける人たちのテンションに一般の人がついていけるわけがありません。もう学生ではないので今回は自分が引率。修士1年の学生を4人連れて行きました。

講演は普段の学会とはちがい、かなりリラックスした雰囲気の中行われるので、発表する先生も冗談を交えながら面白く研究内容を説明してくれます。ただスケジュールはかなりみっちり詰まっていて、夕飯まで講演を聞いたら1時間程度で夕飯を済ませて2時間ほど夜のセミナー、そのあとさらに2時間ほどポスター発表があります。どちらも酒を飲みながらです。そして力尽きるまで飲み続けます。大御所の先生も結構夜遅くまで起きています。自分は2日とも4時までいました。それでもまだまだ飲み続ける人は結構います。そして朝は9時までに飯を済ませて講演会場へ行かなければいけないのでかなりハードです。

大体2日目以降は酒も疲れも残った状態なのでどれだけ講演を聞けているかは疑問ですが、まあ交流することが会の目的なのでそこは目をつぶることになります。いろいろな大学の人と学年も学生かスタッフかどうかも関係なく交流できる会は他にほとんどないので貴重な会です。今後も自分も時間があれば参加したいし、学生も積極的に行ってほしいと思います。
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by Y-Iijima_PhD | 2009-07-11 00:51 | 化学

注意一秒怪我一生

2,3週間前会社のメールに大学から実験の際の注意喚起の案内が来ました。その内容はt-ブチルリチウムの発火事故で学生が死亡という事故に関してで実験をする際にはくれぐれも注意するようにとのことでした。

事故の内容などはリンク先を見てもらえればわかりますが、t-ブチルリチウムは空気中で発火する物質で非常に危険な薬品です。しかも溶媒として使われているのがペンタンというガソリンよりも燃えやすい炭化水素なので事故のように噴出せばあっという間に火炎放射器の出来上がりということになります。危ないもの、毒性のあるものというのは活性が高いということなので合成化学では重要な試薬であるわけですが、扱いには細心の注意が必要です。自分のいた研究室ではt-ブチルリチウムを使うときは後ろで消火器を構えていてもらうことになっていました。自分は使ったことないですけど、似たような試薬は使っていましたね。ちなみに火は出したことはありませんが、消火活動は何度かしたことがあります。その一つが今回の事故物質に近いt-ブチルグリニャール試薬だった気がします。

大した量じゃなければ周りにある可燃物をどけて自然消火を待ってもいいんですけどね。あせって消火器を使うと勢いでビンを倒して延焼なんてこともよくあるようですから。基本的には事故を起こした人は気が動転しているので何もさせず、周りが対処するのがより安全です。そのためにも一人では実験をしないというのが大切なのですが、なかなか大学の研究室だとそうも言っていられない場合もあります。まあこれはシステムの問題でもあるので改善のしようはあると思います。

かく言う自分も昨日試薬の溶液をこぼしてしまって白衣と実験台、床の一部を黄色に染め上げてしまいました。まあ食用の天然色素なので害はない、どころか薬、健康食品として使おうとしているものなので大丈夫なのですが、もはや白衣ではなく黄色衣(一部だけど)になってしまいました。それでも一瞬の気の緩みが大惨事につながることはままあるので注意力が衰えたら無理してやってはいけないなと思います。ということで週末はゆっくり休みます。
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by Y-Iijima_PhD | 2009-02-21 00:12 | 化学