デンマークでポスドク、大学発ベンチャーで研究員をした後、ひょんなことから大学の助教となった一博士号取得者が日々感じたこと、たまにサイエンス(主に化学)についてつづります。


by Y-Iijima_PhD
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カテゴリ:ポスドク問題( 7 )

ニュースにちょっと気になる記事がありました。一応リンクを張っておきますが、すぐに見れなくなると思うので一部を引用。

博士号取得後に任期付き研究員(ポスドク)として大学や公的研究機関で働く人たちの民間企業への就職を増やそうと、文部科学省が、ポスドクを採用した企業へ1人につき500万円を支給する。国策としてポスドクを増やしながら受け皿不足が指摘される中、「持参金」で企業側の採用意欲を高める狙い。文科省が企業対象の事業を実施するのは珍しく、09年度補正予算案に5億円を計上した。


正直な感想を言うとまた文科省が焼け石に水の政策をだしてきたかと。好意的に見れば役所もやはり何とかしないといけないと思っているとも取れますが。

5億円で1人500万円ですから、100件分です。ポスドクは1万人以上いますから1%にもなりません。もちろん中には企業への就職を希望していない人もいるでしょうから単純計算はできませんが、それでもどれほどの効果があるのかは疑問です。

それに年間100件だったら普通に今までも採用されてきていると思います。そこにこれからは500万円あげますよといえば、普通に採ってきた企業にはさらにボーナス500万円となるだけで、新たな就職口ができるわけでもないと思います。今までポスドクを採ったことがない企業限定としたところで、お金を払ったところで今まで問題となってきたミスマッチが解消できるわけでもないしですし。富める者はますます富み的で、全体の底上げにはつながらない、いかにも役人的なお金の使い方のような気がします。

こう考えると文科省も考えていますよというアピールか未曾有の経済危機にかこつけて青天井の補正予算にとにかく何か出せということで出てきた案かと邪推したくなります。

自分自身つい最近までポスドクで、今も実質的にはポスドクと変わらない状況ですが、これからは新たなマスターなりドクターを生み出していく立場でもありますから今後ともこの問題には関心を持っていきます。とりあえず自分がやることとしては、ドクターの質を保証することが重要なので基本的にはドクターコースに進むことを勧めないことだと思っています。それでもリスクを承知で行きたいといい、なおかつできそうだと期待できる人ならば積極的に指導していくのが良いのではないかと思います。研究ができてもリスクを取れないのであれば行くべきではないと思います。少なくとも今の社会状況ではこれがベターだと思います。ポスドク1万人計画も希望すればドクターコースに誰でもいける様な全入状態が問題を大きくしたわけですから、供給側がまず適正な数に絞らなければなりません。そして社会からの需要が増えれば必要な分増やしていくということだと思います。ただ人口も減っていって、大学のポストも減り、教員も減り、大学自体も減っていくだろうとなると増えることはないかもしれませんが。

上の「持参金」にしても、どうせ使うんだったらもう少し有効に使える方法はないのかな。例えばこれを原資にインターンシップで訓練するとかはどうでしょうか。企業側が働きぶりを気に入って、余力があれば採用すればいいし、ダメでも一応企業で働いた経験は生きると思います。派遣社員と同じような気もしますが、そもそもポスドクも契約社員みたいなものですし、問題の根本は同じだと思います。どちらも日本の非流動的な労働市場と、それをよしとするもしくはしがみつくしかないという価値観に問題があると思います。日本も長期雇用が崩れてきましたから、正社員で終身雇用がハイリスクな生き方だという認識が広まれば労働市場ももっと流動的になり、従来の年功序列のテーブルから外れるドクター、ポスドクも受け入れられやすい状態になっていくんじゃないかと期待しています。
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by Y-Iijima_PhD | 2009-05-06 21:48 | ポスドク問題
毎日景気が悪化しているのを知らしめるニュースばかりで本当にいやになってきます。内定取り消し、派遣切りが取り立たされる中、今期の就職活動は本当に厳しいものになっています。自分も休職中ですがこのあおりを受けて次が決まる目処は立っていません。まあポスドクなんて日本の社会からすればはみ出しもので、そもそも会社からの求人がない上、採用は新卒ではなく中途ということになりますが普通は会社での経験もなく、しかも不況時には中途採用から抑える企業が多いようなのでほぼ絶望的といえます。

新卒にしても就職がいいほうである化学系も世界同時不況の影響で雇用はかなり深刻化している印象を受けます。まあマスターは口は減るだろうけど何とかなるかな。しかしドクターとなるとかなり危ないかもしれません。今までドクターでも採用していた会社も枠を減らすだろうし、今までは選ばなければあると思っていたようなところはそもそも経営が立ち行かなくなってきている可能性もあります。ポスドク問題といえば今まではアカデミックの椅子取りゲームだったわけですが、今回は普通に就職浪人も現れてくる可能性が高いんじゃないかと思います。まあこのご時勢ですからそれも当然といえば当然なのかもしれないですが。ドクターの進学率も下がっているから今までほど大きくはならないでしょう。その分ますます誰も関心を持ってくれなくなりそうですが。ポスドク問題はこの不況で一気にハードランディングして手打ちになって政府としてはラッキーとなるかもしれません。

今年は就職協定のためうちの大学ではまだマスター、ドクター新卒の就職活動は始まっていません。例年であれば製薬会社の場合はすでにほぼ終わりの時期です。ここまで急速な景気の悪化は企業も予想していなかったでしょうから、企業にとって就職協定は願ったりかなったりかもしれません。自分はこの協定には関係ないのですが、おかげでリクルーターの人が来ないため企業の内情を知ることができません。

元指導教官と話した結果、今期の就職活動は見送る方針になりました。安売りはするなということですが、そもそも自分では会社にコンタクトを取ることすら許されなかったので売りようもなかったのですが。しかし、今いる会社も資金繰りが苦しく4月以降は厳しいとのこと。もう一回海外ポスドクという話も無きにしも非ずですがそれは同じことを繰り返すだけだと。ということでなんか予想だにしなかったすごい裏技を提示されました。他に選択肢はほぼないので今後はこの方向で動いていくことになります。まあこれも先延ばしでしかないような気がしますがチャンスではあるのでそれをうまく活用していくことになります。しかし、そろそろ自由に羽ばたきたかったのにしばらくはかごの中の鳥です。
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by Y-Iijima_PhD | 2008-12-17 22:39 | ポスドク問題
たまにチェックしている国会議員のブログで文科省の事業予算についてなかなか興味深い内容があったのでちょっと思うところを書いておきます。まあこの人は親が親なので必ずしも信用しているわけではないけれど、国の予算の無駄を省くことを徹底してやろうとしているところは評価できます。

今回気になったのは文科省政策で特に科学技術に関するところ。前半の部分はあまり自分の分野とは関係しないので詳しくは知らないことが多いですが、評価者の意見を読んでいるとどうも無駄なものが多いように思えます。まあ評価者が本当にどれだけ理解できているかわからない部分もありますが。

その中で特に気になったのがキャリアパス多様化促進事業。これは自分のようなポスドクのために作られた制度ですが、評価を読んでいるといやはや厳しい意見が多い。でも事実のような気もするから仕方ないです。

○ポスドクの就職率等の目標設定なく事業を行うべきではない。
○課題設定能力の無いポスドクが他の民間企業に採用されても使えないのではないか。採用した企業の方が不幸。能力のあるポスドクは自分で道を切り開く。
○現実に企業がどのような人材を求めているのかを大学側等につなげるだけであれば、あえて事業として実施する値打ちがあるのか。ポスドクだけにこのように手厚くする必要があるのか。
○ポスドクを1万人に増やした尻拭いがこのキャリアパス事業。18年度から3年間やれば十分。ポスドクの把握も出来ていない大学に国費を出す必要はない。
○中学・高校の教員になりたいと思うポスドクがいるが、文部科学省の教員試験制度がポスドクの流動性を低下させている面があるのではないか。まずは制度改革が先。
○実際の大学院では担当教官に絶対服従でマネジメント能力がそもそも養われない。そうした大学側の仕組みを変えるべき。
○人材をマッチングさせることは大学の本来業務であり、補助金でやるべき業務ではない。そういった業務をやらなければ学生に見放され、潰れるということ。


なんとも耳が痛い事柄ばかりです。で、評価した全員が不要との判断をしています。自分のように状況を大体わかっていながらポスドクに行った人間は自己責任でしょう。自分もそのつもりで海外で就職先を探していますが、なかなか厳しい(空きが少ない)です。まあ化学者のポジションをデンマークで探すというのはデンマーク人でも難しいようなので選んだ国も悪かったかもしれません。まあここからわかるのは国も一般人もポスドクにこれ以上金を使いたくないということでしょうか。

グローバルCOEプログラムに関してもやりすぎ、バラマキとの批判が結構出ています。その中でも特に厳しいのが、

○ポスドク、RAなど若手研究者の雇用の増加を成果としているが、大学院生の生活保護が目的ではない。
○COEではなくポスドク対策ではないか。ポスドクが一時的に雇用されても何の解決にもならない。
○目的は高く設定されているが、成果目標の設定が低く、結果的に大学博士課程において世界で通用し世界で引っ張りだこになる博士を輩出できない現状では不要である。RA,PDは予算から外すべき。


グローバルCOEは自分が卒業してから始まったのでよくは知らないですが、予算額は前のCOEより多かったんじゃなかったかな。自分は前のCOEの恩恵は結構受けていますが、まあ評価の中にある意見は結構的を得ているように感じるものもあります。COEのときはポスドクはあまり入っていなかったけど、予算がかなり大学院生の生活保護に使われているというのは否定できないような気がします。しかし、これに関してはそもそも日本の大学が博士課程の学生を人件費のかからない労働力として使っている点に根本的な問題があります(理系の特に実験系)。本当にグローバルを目指すなら海外と同じように博士課程の学生にちゃんと給料を払って雇用するという体制にする必要があると思います。その代わり博士課程に入るための審査は厳しく、定員も減らす必要があります。ここを徹底すれば世界に通用する博士の割合は増えるだろうし、企業に行っても通用する人材を育てられるんじゃないかと思います。今みたいにほぼ無試験で誰でも彼でも入れて、COEのお金がもらえる(全員ではないけど)というのはいい状況ではありません。COEの予算を取るときには今まであまり交流のなかったスタッフ同士が予算獲得のために一丸となって申請書を準備しています。みんなで予算を分け合う過程で新たな共同研究が生まれ、いい成果が出ることもありますが、予算がほしいから集まっているだけという気がしなくもないです。となるとバラマキといわれても否定できないかもしれないですね。

日本は先進国の中でも突出して高等教育にお金をかけていない国ですから、本気で競争力を付けたい、少子化を食い止めたいとか思うのだったらもっと教育に予算を回さなければならないはずですが、大学も変わらないとバラマキとたいして違いのない状況になりかねないことも否定できません。基本的に文科省の政策も今の大学のシステムも自分はあまり好きではないのでアカデミックに行きたいとは思いませんが、日本に帰ったとしたらミイラとりがミイラにではないですが、多少なりともこの恩恵にあずかることになるかもしれないので複雑な気持ちです。自力で見つけられたら良いんですが、自分の分野は自分の力だけではどうにもならないところもあります。
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by Y-Iijima_PhD | 2008-08-28 08:30 | ポスドク問題

ドイツの博士

ドイツ人の同僚が言うにはドイツでは博士号を取るとパスポートにも免許証にも名前の前にDrをつけることになるんだそうです。学生のときは金もないので扱いのひどかった銀行もDrをとると手のひらを返したように態度を変えるんだとか。まあ学生だから金がないとは行っても博士課程の学生は給料20万円ほどもらえるようだから日本とは大違いです。というか日本が異常なんですが。警官も免許証にDrとあるとやはり対応が違うそうです。ドイツのサイトで航空券や電車のチケットを買うときもタイトルにDrの選択肢があるので、ドイツではDrがイギリスのSirまでは行かないにしても回りから尊敬を集める称号のようです。

翻って日本では、何も知らない人にしてみればなんだかすごそう、ちょっと知っている人からはすごい、もうちょっと知っている人からは大変ですね、企業からはうちは博士は取りませんといわれる始末。まあせいぜいとってもいいよというぐらい。しかもお金がないのはドイツ人博士の比ではありません。

だからドイツがいいかというとそうでもなさそう。それはこれを話したHamburgで学位を取り、Hamburgを絶賛したドイツ人がデンマークに来てもう10年以上、こっちにアパートも買って、ドイツに帰る気がないことからも想像できます。

ドイツも出生率の低下による少子高齢化がすすみ、年金、社会保障を維持するのが困難になりつつあるようです。しかもシステムはほとんど日本と同じ。おそらくドイツは日本がこれからどんな対応をしていくか注目していることでしょう。そしてほとんどの場合、反面教師としてみていくのではないかと思います。団塊の世代の引退により、今の就職は売り手市場のようですが、バブル崩壊以降採用を抑えて、人材を育てないできたつけがこれから大きく響いてくるのではないかと思っています。そして後5年もすれば団塊の世代の人たちが本格的に年金をもらい始めるので現行制度で行けば、現役世代の負担が大幅に増加することは間違いないです。

大学の方もつぶしの利かない博士課程へ進む学生は減ってきているし、授業料も上がり続け、生活費も高くなっているので、今までのように人件費のかからない大学院生による無償労働で研究を続けていくなんてことはもう成り立たないでしょう。

日本がこれからどうなっていくか、まあおそらく悪くなっていくと思いますが、国外からさめた目で見ていきたいです。
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by Y-Iijima_PhD | 2008-06-14 07:02 | ポスドク問題
最近ネット上でポスドク問題がほとんど話題になっていませんが、当然終わってもいないし、解決してもいないと思います。おそらく何を言っても日本という国が変わらないということがわかり、いっても無駄だというふうになっているんじゃないかと思います。そんな日本に失望した人にとってはデンマークに移住するというのは結構前向きに考えても良いんじゃないかと思います。

日本にいるとデンマークの情報などほとんど入ってこないので、せいぜい北欧にあって、アンデルセンの生まれたおとぎの国程度のイメージしかないんじゃないかと思います。自分もデンマークに来ると決まるまでは、地図で場所は指せるし、首都の名前も知っていたけど、デンマーク語なんて言葉があることも知らなかったし、国土の大半を大陸から突き出た半島が占めるにもかかわらず首都が島にあるなんてことも知りませんでした。もちろんそのほかの情報についてはほぼ皆無。化学系にしても有名な先生は数人で、本当に研究なんかしているの?という感じでした。

しかし、来てみると実に暮らしやすいいい国だと思いました。コペンハーゲンが住むには高くつくけど、幸せに暮らせる都市ナンバー1になったのもうなずけます。治安が良いので夜一人で歩いていても特に危険な目にあったことはないです。デンマーク人とムスリムの間に対立はありますが、宗教に無関心な日本人は中立な立場なのでどちらからも危害を受ける可能性は低いです。そして夏涼しく、遅くまで日が沈まない準白夜も自分にとっては心地いいものです。ビールがうまいのもいい点です。さらに旅好きの自分にとっては空港が街から電車で15分ほどとすぐ近くで、ヨーロッパ中の都市に格安のチケットで飛びまわれるというのも魅力的な点です。

そして何より待遇がいい。自分の立場はポスドクなので1,2年契約というのは他の国と変わりませんが、給料は結構良い方だと思います。おそらく博士号持ちとしてはデンマークでは最低ランクだと思われますが、それでも手取り額は学振の国内PD以上です。定職に就ければさらに上がるはずです。物価は基本的に高いですがそれでもかなり余裕を持って暮らしていけます。自分は民間研究所勤務なので税率は38%と高率ですが、大学だと税金をディスカウントしてもらえるようです。

また自分はグラントを持っていないので研究所から直接雇用されていますが、デンマークでは個人でグラントを採ってポスドクをやっている人はあまり多くないように感じます。そういう人はアメリカなどに行ってしまうのかもしれません。研究の規模ではやはりアメリカなど他国に劣る部分が結構あるのでアカデミアを目指したいという人にはあまりプラスに働かないかもしれません。デンマークでアカデミアにポジションを得るのも結構厳しいようです。アカデミックなポジションを得た日本人もいますが。

しかし、産学連携が盛んなので企業でもいいと言う人にはいいかもしれません。特に日本では不遇のバイオ分野は大学での研究も盛んだし、大学発ベンチャーも多く、規模の大きな企業でもかなり力を入れているようで、求人も結構あるように感じます。規模が小さい国なので、うまいことニッチを見つけ出し、そこに一気に人と金を投資して競争力を持とうという戦略のように感じます。ということで自分でグラントをとっていない人でも、何か売り込める要素があれば交渉しだいでポスドクとして雇ってもらえるかもしれないし、それ以降の道も開けてくるかもしれません。また直接企業に応募してみるのもありかもしれません。日本とは違い専門を持っている人が優遇される国です。まあほとんどの国がそうなんでしょうが。でも特に日本人博士は全般的にデンマーク人博士より技術も知識もしっかりしているので、売り込みさえしっかりやればかなり重宝されると思います。

デンマークの難点を言えば外食が基本的に高くてまずいこと、ビール以外何でも高いこと、サービスが悪いこと、冬が寒さはたいしたことないけど長くて、暗くて、天気が悪いことですかね。でも十分暮らせる給料はもらえるし、日本での博士号取得、それ以降の不遇を耐えてきた人にとっては十分許容できる範囲だと思います。おそらく得られるメリットの方が大きいと思われます。

まあ自分がデンマークで定職に就けて本当にメリットがあるかどうかがわかると思うので、先陣を切れるように頑張りたいと思います。運よく職にありつけた暁には知りうる情報をアップしていこうと思います。

そしてデンマークで暮らす日本人一同新しい人が来ることは大歓迎です。デンマークでは日本人はかなりのマイノリティなので情報交換しあい、たまに一緒に食事したり、飲みに行ったりして交流しています。日本で暮らしていると出会うことのなさそうな多様な経歴の人と交流できるのでそれだけでもかなりいい人生経験になると思います。

海外に行くというと大抵はアメリカ、せいぜいイギリス、フランス、ドイツぐらいだと思いますが、デンマークも研究だけでなく、生活レベル、暮らしやすさも含めれば十分考えてみる余地があると思います。特に宣伝していないブログなのでどれだけの当事者が見るかはわからないですが、少なからずアカデミアからのアクセスがあるので書いてみました。何らかの参考になれば幸いです。
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by Y-Iijima_PhD | 2008-05-18 05:47 | ポスドク問題

博士の日

5月7日は博士の日だったそうです。

1888(明治21)年のこの日、伊藤圭介(植物学者)、菊池大麓(数学者)をはじめ25人の学者に博士号が授与されました。
 これが日本初の博士の誕生です。
 当時は論文の提出による博士号ではなく、教育への貢献を評価された名誉博士的なものでした。


リンク先にあるグリム童話のものしり博士の話を読むと、博士ってなんていい身分なんだと思うけど、現実はそれはそれは厳しいものです。でもそれは日本で博士号を取ったからかもしれません。欧米では大体の人は博士課程に進む前に就職しているので職歴もあるから博士号をとった後の選択肢も広いし、企業も博士号取得者には給料も役職も優遇することが多いので博士号をとるメリットも大きいものとなっています。

日本では去年ポスドク問題が結構議論になっていましたが、最近はかなり下火になってきました。これは問題が解決されたというより、こちらで議論されているようにおそらくポスドク側は国は何もしないということがわかったので言っても無駄だと思うようになったのと、将来性の見出せない博士課程に進む学生の数が減ってポスドクの供給が減ったからだと考えるのが妥当だと思います。つまりは自然消滅。解決策を何も見出せないまま当事者がいなくなって終わりということだと思います。

その結果どうなるかということに関してはこちらのBlogにいろいろ書かれています。自分も基本的には同じように考えています。研究機関としてのアカデミアは衰退するでしょうが、学歴ブランドを付与する機関として大学がなくなることはないでしょう。工学系の修士にしてもどこの大学、研究室出身で、いわゆる人間力があるかどうかが大事で、具体的に何をやったかはその研究室で卒業できる程度の訓練を受けているんだったらあまり関係ないといった感じがします。

まあ自分はもはや日本でアカデミアに行きたいとは全く思わないので、どうなっても別にどうでもいいやという感じです。そもそも日本に帰ること自体前向きには考えられない状況です。政治は全く信用できないのに税金を払って、政治家や官僚が無駄遣いするなんて無意味にしか感じられないし、社会システムは崩壊しつつあるというか現状では自分たちの世代は負担が増えるばかりで全くメリットのないシステムなので早く崩壊して新制度に移行してもらわないと困るのですが、それも望めない。若者に自殺者が増えているのもこれらに無関係ではないでしょう。考えれば考えるほど日本は次の世代、若者のための国ではないんだということがよくわかります。そして政治家も票を取るためには若者よりも数の多い年寄りの利益を優先する政策を唱えた方が有効なのでしょう。ますます日本では子供も育てられないという状況になり少子化も進みそうです。「でも、こんなときだからこそ国内で頑張らないといけない」という意見も聞こえてきそうですが、よほど思い切ったことでもできない限り、その努力が現状システムを維持することになりますます自分の首を絞めていくことになりそうな気がします。経済も「失われた15年」の後は衰退の10年にでもなるんじゃないかと思っているので、自分が現役の間はほとんど日本には期待できないんじゃないかとも思っています。ここで都市部で大地震とか自然災害が起きたら一気に落ちぶれそうな気がします。早くこんなことをいちいち考える必要のない状況になりたいです。
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by Y-Iijima_PhD | 2008-05-08 08:51 | ポスドク問題

蜘蛛の糸

「博士募集」に応募殺到 秋田県教委が教員採用

MSNニュースより、リンクがいつまで続くかわからないので引用しながら思うところを書いていきます。

全国で初めて秋田県教委が実施した博士号取得者対象の特別選考で合格した理工系大学研究員6人が1日、県立高校教員に採用される。選考は予想を大きく上回る10倍の難関だった。地方の教員試験への博士殺到には、「末は博士か大臣か」と言われた時代からは想像もつかない深刻な理由があった。(宮原啓彰)


これは現在ポスドク問題で苦しむ人にとっては蜘蛛の糸のようなものだったと思います。自分も募集要項を見てみましたが(応募する気は皆無ですが)、けっして待遇はいいとはいえません。民間企業に入ったほうがはるかにいいはずです。それでも応募が殺到するのは大学、国研で研究者をやっていても契約は期限付き、上のポジションが得られる可能性も低く、給料も安い。かといって民間に就職しようにも企業は博士を採らない。専門にこだわるからだめなんだといわれても新卒優遇の社会状況では職歴のない人間が採用される見込みはないという八方ふさがりの状況からなんとしてでも抜け出したいという人が少なくない数でいるということでしょう。

応募があるのかさえ不安だった秋田県教委だが、結果的には反響の大きさに驚かされた。意外だったのは面接で「大学にいても生活できない」と志望動機を話す人がいたことだ。


もちろん博士の就職状況は分野によって全く違ってきます。文系はもっとも厳しく、工学系はそれほどでもありません。これは研究内容が産業にどれほど関係しているかによります。自分の専門である有機合成化学は産業にほぼ直結しているといえるます。もちろん大学でやっている研究は商業目的ではないですが、実験の技術、反応の知識、分析技術はほとんど同じです。基本的には目的や考え方、作る量が違うぐらいで、それらは会社に入ってから学んでも遅くはないと思います。ということで会社によって博士はあまり好きじゃない、採ったことがないからわからないというのはありますが、就職先がないとか専門と全く関係ない仕事をしないといけないというようになる可能性は最も低い分野かもしれません。

しかし、「大学にいても生活できない」ということに関しては同じような状況に近づきつつあるのではないかと思います。アカデミックにこだわらなくても専門を生かせる分野ではありますがやはり少なからずポストが空くのを待っているポスドクはいますし、アカデミックポストの倍率は高いです。高倍率を勝ち抜いて得たポストですが、最近では3年程度の任期制。その間にいい結果を出して、かつ次のポジションの空きを見つけ、また高倍率を勝ち抜かなければ再びポスドクに後戻り。場合によっては研究員としてお金を払って大学に籍を確保して次のチャンスを待つなんてこともありえます。その上給料も安い。実際に給料がどの程度なのかはっきりとは知りませんが、出身研究室の助教の生活状況、給与明細を見たことがある人の話からして安いといえるレベルでしょう。準教授ですら高くはないですから(こちらはちょっと見たことがあります)。それにしても大学の助教の給料は実際にいくらもらえるかは実際に働き始めるまでわからないんですかね。欧米はもちろん企業、アカデミア問わず日本でも企業は内定の前に最初の給料がいくらかわかると思うんですけど、それを提示しないで採用しているような気がするんですがいいんですかね。超買い手市場なので応募する方はどうしようもないですが。

昔は教授に気に入られて助手として大学に残れればあとは大体エスカレーター式に出世していける、はっきり言ってぬるい職業だったと思います。そういう点では官僚に似ているかもしれません。公募制、任期制になって悪しき因習がなくなっていくのはいいですが、若い世代ばかりがとばっちりを受けているような気がします。

文科省は「研究職にこだわらず、外の社会にも視野を」というが、民間企業では「学部卒入社の同年代社員に比べ、実務経験が乏しく、専門領域が細分化し企業ニーズと一致しないなど博士の採用を避ける傾向にある」と沢教授。


これがポスドク問題のみならずニート、フリーター問題も深刻にしているのではないかと思います。崩れてきているとはいえ終身雇用と年功序列がこの根本的な原因ではないかと思います。そして付和雷同する協調性、空気を読むことを重視する企業だと、研究というのは基本的にその逆なのでそれをやってきた博士は相性が悪いと思います。

ポスドク問題は根が深くおそらく解決されることはないでしょう。博士進学者も減ってきているので今後は大学教員ポストの需要と博士卒の供給が均衡を取れるところまでいって落ち着くでしょう。あふれた人は社会の闇に葬り去られることになると思います。博士号取得のためには多額の税金が投入されていますが、新たに税金を投入して救済するより損きりしたほうが安上がりでしょうから。そのかわり日本のアカデミアは崩壊し、人材流出にもさらなる拍車がかかることでしょう。まあ、海外で暮らしていければあまり関係ないんでいいんですけど。
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by Y-Iijima_PhD | 2008-03-31 07:13 | ポスドク問題