デンマークでポスドク、大学発ベンチャーで研究員をした後、ひょんなことから大学の助教となった一博士号取得者が日々感じたこと、たまにサイエンス(主に化学)についてつづります。


by Y-Iijima_PhD
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エコナは危険なんだろうか

久しぶりの更新です。忙しいのもあるけど、毎日代わり映えのしない日々なので最近書くネタがないのが一番の原因です。そんな中、ネットのニュースでエコナシリーズの食用油を回収するというのが書いてありました。多分すぐ消えるので一部引用。

花王は16日、特定保健用食品「エコナ」シリーズ全商品について、17日に出荷を停止し、販売を自粛すると発表した。対象は、食用油やマヨネーズ、ドレッシングオイルなどシリーズ46商品と、同商品を使ったドッグフード13商品を合わせた計59商品。

 商品に「グリシドール脂肪酸エステル」が多く含まれ、発がん性のある「グリシドール」という物質に分解される可能性があるため。同社では、「安全性に問題はない」としているが、グリシドールに分解されるメカニズムや可能性がよく分かっておらず、欧州を中心にグリシドール脂肪酸エステルの安全性を懸念する声が高まっていることから、販売を見合わせることにした。


生化学、食品化学は専門外ですが一般的な有機化学と生物学でわかる範囲で考えてみます。まずエコナの主成分であるジアシルグリセロールは一般的な脂肪であるトリアシルグリセロールから脂肪酸が一つなくなった形です。細胞内のシグナル伝達にもかかわっているようなので、消化管の粘膜細胞に影響がゼロとはいえないかもしれないですが、これ自身、食品中にもあるようですし、脂肪が消化、吸収される過程でもできるものなので毒性があるとは考えにくいです。最終的に腸から吸収されるときにはグリセリンと、脂肪酸になるはずだからその後は普通の脂肪と変わりません。ジアシルグリセロールがリン酸と結合してリン脂質になると、これは細胞膜の構成要素であったりもするので多少違った影響もあるかもしれないけど、調理から消化、吸収の過程でできるとは考えにくいので特に問題なさそう。

しかし、今回の問題であるグリシドールエステルとなるとちょっと危なそう。グリシドールは反応性の高いエポキシ基を持っているので、いろいろな物質と結合してしまう可能性があります。まあ加熱調理をすれば大抵何かと反応してこのモノが食品中に残っているとは考えにくいですが、どの程度の残っているか、何と反応したかによっては危ないかもしれません。実際にどの程度入っているのかの情報がないし、毒性も知らないのでなんともいえないですが、このものが入っていないことに越したことはないと思います。Wikiには胃酸で分解されてグリシドールが出るから危険じゃないかとかかれていますが、これはむしろグリセリンに戻るほうが起こりうる反応だと思います。どうやってできているのか単純に考えれば、遊離の水酸基が脂肪酸を脱離基として環化するのか、先に脂肪酸が脱離して水酸基が巻き込むかのどちらかでしょう。実際には簡単にはおこらなそうな反応ですが。

実際にどんな条件にされされているのかわからないので正確なことはわからないですが、グリシドールエステルが副生しないプロセスを確立してほしいものです。今回のエントリーは絵を描くのが面倒かつChemDrawが入っていないPCで書いているのでちょっとわかりにくいですかね。
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by Y-Iijima_PhD | 2009-09-17 01:15 | 化学