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デンマークでポスドク、大学発ベンチャーで研究員をした後、ひょんなことから大学の助教となった一博士号取得者が日々感じたこと、たまにサイエンス(主に化学)についてつづります。


by Y-Iijima_PhD
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紙一重

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この単純な化合物、名前をインドールといいます(Indole C8H7N)。この構造は色々な化合物に含まれていて、例えば必須アミノ酸の一つであるトリプトファン、神経伝達物質のセロトニン、メラトニン、さまざまな植物に含まれるアルカロイド、抗炎症剤のインドメタシン、そしてジーパンの染料であるインディゴもインドールからできているなど非常に生活に密着した分子であるといえます。

このインドール、低濃度で非常にフローラルな香りがあるといわれています。実際にオレンジやジャスミンなど多くの花の香りの成分でもあって、香水に使われる天然ジャスミン油は約2.5%のインドールを含むそうです。


が、



これは非常に低濃度のとき限定の話です。実際にこれがインドールだよと見せられたら、それはそれは素敵な香りがすることでしょう。そう、なんと言うかいわゆる肥溜めのにおいがするはずです。実際大便の臭い成分にもインドールが含まれるています。

ヘクソカズラ(屁糞葛。まさに名は体をあらわす)という雑草がありますが、この植物もこのインドールを含んでいます。よくフェンスに巻きついていたりするどこにでも生えている草なので誰でもこの臭いを体験できます。まあほとんどの人は毎日体験しているでしょうが。

普通は悪臭と感じるのに低濃度では良い匂いに感じるとは、人の嗅覚とは不思議なものです。まさに悪臭と芳香は紙一重といえます。香水もつけすぎるとクサイですからね。過ぎたるは及ばざるが如しです。

ちなみに別に今この化合物を使っているからこの記事を書いたわけではないです。幸いなことに臭いのするインドール化合物は扱ったことがないです。他の悪臭物質はいくつか取り扱いましたが。ただ、ふとこのインドールを作る一般的な方法であるFischerのインドール合成の反応機構が実は教科書に書いてあるのは間違いではないかという話を思い出したけど、文献が見つけられなかったので代わりに書いてみました。誰か知っている人がいたら教えてください。
by Y-Iijima_PhD | 2008-04-15 07:00 | 化学